むなしい環境調査にやりがいをもたせるには2007年09月18日 22時21分53秒

僕の仕事は河川の調査と計画です。
調査と言ってもいろいろあって、
水質調査もあれば魚や植物なんかの生物調査、
流れている水の量を計測する流量調査、
変わったところでは川に来ている人の人数を数える調査もあります。

でもほとんどメインは生物調査。
でも僕の専門は生物ではないので、
実際には同じ部署の生物専門の社員が調査をします。

仕事としていろんな川に出かけて、
網で魚捕ったりもします。
北海道なので景色もよく水もきれいな川も多くて、
自然の中で仕事している実感で
それだけで楽しくなるときがあります。

でも、たまに生物調査担当の社員が言うことがあります。

「調査がむなしい」

ため息つきそうな顔でこういわれると僕もつらい。
いったい彼らの気持ちは何なのか。

調査して結果を示しても計画は何ら変わらない。
これがむなしさの原因のようです。

河川改修やダム計画があると、いまはどんな小さな川でも
ほとんどの場合、環境調査が行われます。
それはもう、またげば渡れるような小さな川でも
きっちり予算つけて環境調査がなされます。
いわゆる事前調査としてです。

そんな環境調査が役所から発注されて、
僕らのような会社が受注して調査をします。
で、どんな植物が生えてますよとか、
どんな魚がいますよとかいう結果と、
それをふまえて改修でどんなことに注意したらいいかを
報告書にまとめて役所に提出します。
これが僕らの仕事。

だけど彼らの感じるむなしさは、
どんな報告書を書いても、
工事の時にちょっとした「配慮」がされるだけで、
計画の根本が変わることはない
というところから来ているみたい。

確かにそうなんです。
植物調査なら、貴重種の植物が工事の場所に生えていたら、
工事前にどこか無難なところに移植しておしまい。
魚なら、渇水の時にも川を行き来できるような最低限の
断面を確保しましょうとか、そんな程度。
もちろん報告書の提案の時にいろんなことを考えるのだけど、
改修のカタチがほとんど決まっているような状態では、
できることは限られます。

ダム計画に関係する調査でも、
できるだけ配慮はするけど、ダム計画自体が変わることは
ほとんどありません。
そんな状況で環境調査の報告書を丹誠込めて書いても
報われないならむなしくなります。
気持ちはわかる気がします。

ま、これでも10年、20年前と比べたらだいぶ進んだと思いますけどね。
環境調査自体あまりなされていなかったし、
やっていても今と比べたら全然レベルが低かったでしょう。
中には高いレベルのものもあったでしょうけど、
おそらく平均レベルは今と比べたら全然低かったのだと思います。

いまはそれと比べたらだいぶ良くなったと思います。
平均レベルは確実に上がった。
でも、やっぱり環境調査が治水のための計画の付け足し程度の
認識しかないところから抜け出していない気がします。

環境に配慮するという言い方をよくするし、
これがもう決まったフレーズとしてあまたの場面で使われています。
でも僕はこれが環境へのスタンスを一番よく表していると思っています。
配慮という言葉を何の疑問も持たずに使い続けている間は、
配慮という付け足しのスタンスから脱却できないように思います。

そう、配慮なんですよ。
積極的に保全するというより、本来の目的があって、それ以外のことも
一応頭の中には残ってますよというスタンス。
ここから脱却しないといけない。

ではどうしたらいいのか。

僕が思うに環境調査をとにかく早い段階でやることです。
測量より前、
地図に計画のラインを入れる前。
どこにどんな植物が生えていて、
どこにどんな魚がいるかをわかって、
それが必要な環境を整理してから、
地図に計画の線を引いていく。
場合によっては計画そのものに目を向ける。

いまは少なくとも順番が逆。
線を引いて、だいたいの計画ができてから環境調査をやる。
するとその線を変えてしまうようなことを環境調査からの提案で言っても、
なかなか計画そのものを変えることはできない。

ダム計画もそう。
もちろん砂防ダムなんかも含めてですが、
ダムの治水や利水の計画を固める前に、
ダムサイトの適地選定の段階で、
地質調査とあわせて環境調査もやってしまう。
そうすると、少なくともダムの位置を決めるところから、
環境に負荷をかけないやり方や、
そもそもの必要性から議論できる。
もっとも、そこまでのやる気があればと言う話だけど。

とにかく計画が立ち上がった最初の段階で
環境調査をやる。
これが環境が配慮されるものから
積極的に保全されるものへと変わる
簡単で大きな軌道修正になると思っています。
10年後はどうなっているでしょうね。
そのために今できることは今やる。
それだけのことです。

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