応用生態工学会セミナーでの雑感(その1)2008年08月27日 19時41分22秒

昨日、応用生態工学会の札幌セミナーに参加した。
応用生態工学会というのは、土木系の人と生態系の人とが一緒になって議論して、河川などで生物の保全の技術を高めようという人達の集まりだ。
北海道では年に一回、この時期にセミナーが開かれている。
例年はバスで現地視察ツアーにでかけて、そこで一泊して室内の講演も聴くという組み合わせだったけど、今年は札幌で1日のみ。
午前は水理実験、午後は講演だった。

講演は最近の多自然川づくりの考え方の紹介が中心。
特に中小河川での改修方法がだいぶかわったことが説明された。

ポイントは大きくはこの2点だろう。
○河床は掘り下げずに横に広げる
○河岸は緩傾斜にこだわらず立てても良い

両方とも大賛成だ。
この1,2年くらい考え続けてきたことなんだけれども、河川改修で川底を掘り下げることは、実は想像以上にデメリットが多いんじゃないかと。

川底を掘り下げると増水時には水深が深くなるので、水の流れによる河床への負荷が大きくなる。
河床への負荷が大きくなると川底は掘れていくことになり、一旦掘れ始めたらさらに深くなっていくわけで、それがいわゆる全国的な傾向の河床低下の最大の原因だろう。
そして、さらに掘れて河床から岩が出てきたらもうもとには戻らない。

やっぱり僕が考える程度のことは中央の識者の人達も考えていたようで、それじゃまずいから河床掘削はやめようということになったのだろう。

ただ、簡単に横に広げよとは言うけれど、実際の現場ではそう簡単にはいかない。
横に広げようとしたらその分だけ用地代がかかるわけで、それを避けるためにこれまでは下に掘り下げてきたのだ。
用地代をかけてでも横に広げるという理想を、現実の現場は乗り越えられるかが一番の山だと思う。

さらに、複断面で計画されている河川では、低水路を掘り下げないかわりに、その断面積分を平たくならして巨大単断面のような断面の計画に直してもいいのだろうか。
さっきこの1,2年考え続けてきたと書いたのはこのことで、北海道の田舎の川で高水敷(いわゆる河川敷)が何に活用される訳でもないようなところでも、当たり前のように複断面で改修されている。
複断面の低水路部は、もとの川の河床高と比べて数メートル掘り下げることもあって、増水のときの水深も数メートルになり、高水敷と比べて低水路部の河床への負荷があまりにも大きい。
そうであれば、堤間長はそのままで巨大単断面のようにすれば、河床への負荷は分散されて、河床低下が抑えられる可能性をもてるだろう。
そんなことを考えていた。

そしてもう一点。
昨日の講演のほとんどに共通していたんだけど、有るべき姿の考え方の議論をでていない。
つまり、理論や検証の裏付けがなかった。
緩傾斜より直立護岸で河床幅を広くというのも賛成で文句はないのだけど、やはり裏付けは必要だ。
理論や検証の裏付けがないと、人の考え・思想がころっとかわると、そのたびに現場が振り回されることになる。
(批判だけでなく自分も考えてみようと思う)