重松清、藤谷治、あさのあつこ、田村優之、森浩美、島本理生2014年09月16日 05時41分25秒

今回は当たりが多かった。
ほっこりするもの、じわっと感動するもの、小説の楽しさいろいろあり。
----------------------
ステップ 重松清
奥さんが娘を産んだ直後に亡くなり、お父さんが娘をひとりで育てることになる。
女の子が保育園から小学校に上がるまでの、お父さんの葛藤、女の子の成長が丁寧に描かれる。
女の子とお父さんに思わず頑張れーと声を掛けたくなる。
シンプルなストーリーだけど優しさ厳しさが盛りこまれ、引き込まれる感じで◎、読後感も◎。
すばらしい。

下北沢 さまよう僕たちの街 藤谷治
サラリーマン生活で貯めたお金で下北沢に個人の作品を売る場所を提供するレンタルスペースの店を出した若者、この街での人との出会いを楽しむ。
下北沢という街の面白さを描きたかったのだと思うけど、僕はあまり理合できず。
よく知っている人なら面白かったのかも。
最後は惰性で読んで△、読後感も△。

The MANZAI 1~4 あさのあつこ
中2男子、転校してクラスでは目立たない存在であったはずが、突然、自分に惚れたと大柄なサッカー部キャプテンが一緒に漫才やろうと誘ってくる。
人なつっこいこのキャプテンから距離を置こうとするもうまくいかず、文化祭でのロミオとジュリエットで二人の漫才を入れようというキャプテンの提案にクラスが賛成する。
でてくる会話が漫才のようになっていて、軽快で読みやすい。
中学校の教室が目に浮かぶようで楽しくて◎、読後感は○。

青い約束 田村優之
銀行グループに所属するアナリスト、高校の頃にボクシングで共に争いいまは新聞社で経済ジャーナリストとして活躍する友人と財務省の廊下で出会う。
彼とは高校時代に起きたある出来事のあと、消えない疑念から距離を置かざるを得なくなっていた。
発端をつくったものがどこまで責任を背負うべきなのか、責任感という言葉だけでは片付けられない難問であることに気づかされる。
仕事で真っ直ぐを貫くことの美しさの側面を感じられる場面もあり感じることが多く◎、読後感も◎。
すばらしい。

夏を拾いに 森浩美
40代後半のサラリーマン、息子を遊びに誘うも冷めた返事にがっかり。
これをきっかけに自分が子供の頃に遊び仲間たちと企てたひとつの冒険、不発弾探しを思い出す。
読んでいて同じように自分が子供の頃にやったちょっとした企みを思い出したりして、頭のなかが小説なのか自分の回想なのかわからなくなったりして。
少年の冒険物語は単純に楽しく◎、読後感も◎。
すばらしい。

生まれる森 島本理生
大学生の女の子、失恋してさらに実家とぎくしゃくして家を出て、夏休みだけ不在にするという友達の部屋に居着く。
その友達の兄と仲良くなるけど、お互いにあまり距離が縮まらない。
好きになった人とうまくいかなくなったあとの女の子の心の動きがとても繊細に描かれていて読んでいて引き込まれていく。
若いころはこんなふうに女の子の心のなかを考えなかったなあとじわっとふけられる感じで◎、読後感は○。