河畔林伐採のトラブルから考えた地域と技術士の役割2007年10月03日 12時23分51秒

昨年、北海道のある川で河畔林の伐採が問題になった。
伐採が地域から反対されたのだ。

反対というのは主にラフティング業者からで、
水際の河畔林を切られるとお客さんが景色を楽しめなくなると。
業者としてはそれで客が減ることが心配なんだろう。

河畔林の伐採は治水のためだ。
水際に木が多いと増水時に水が流れにくくなり、
氾濫の危険性が高くなる。
だから木を切りたいというのが役所の主張だ。

伐採の計画を立てて、いざ実施という段階で現地にテープを張り巡らせたら、
これはいったい何事なんだとラフティング業者の目にとまり
猛烈な反対にあったというのがことの成り行きのようだ。

結局、伐採は中止となった。
いまは役所と地域とで話し合いが進められている。


ところで地域に理解される治水対策とはどんなものなんだろうか。

治水事業、つまり河川改修やダム事業はとにかく批判の的になりやすい。
反対する側の「自然を壊している」とか言う声は大きく響くけど、
それで得られる安全とか水不足がなくなっているとかいうところは、
あまり実感として理解されているようには僕には感じられない。
治水と環境のどちらが大事かという議論をしたいのではない。
いろんな観点をもって理解する必要がある問題だと思う。
そして地域の人達が地域の問題として理解できることはありえるのか。
役所任せにせずに。

僕はずっと川の仕事をやってきた。
大学卒業してすぐに受け持った仕事がダムの治水計画で、
しかもそのダム計画は住民の反対を受ける逆風の真っただ中だった。
右も左もわからないような状態で、見よう見まねでせっせとダムの妥当性を示す資料をつくった。
反対する住民を意識しながら議論に打ち勝つ理屈づけに知恵を絞る毎日だった。
どちら寄りという問題ではない。
当時は仕事のやり方を覚えることで精一杯。
だけど対立の構図を眺めながら、平行線の議論の渦中にいて、
自分の立つ位置がどこなのか、考えあぐねる毎日だった。
そんな経験からか特に川のことで住民とトラブルになっている話には自分の仕事でなくても敏感になった。

河畔林のトラブルが起こった川の話に戻そう。

役所は治水、つまり地域を水害から守るために木を切りたいと考える。
ラフティング業者はお客さんを楽しませるためには木を切ってほしくないと主張する。

業者にはお客さんのためという名目があり、それは自分たちの利益にもつながるという目論見(もくろみ)がある。
そしてラフティング業者が繁盛してお客さんがたくさん訪れるようになると、その地域がにぎやかになる。
それは地域の目玉になる。
つまり地域の観光が活性化する。

こんなことを考えているうちに、はたと気づいた。
どちらも地域のためになることなのだ。
治水も観光も。
業者がからんでいるのでその共通点が見えにくいけれども。

その時の新聞記事にコメントがあった。地域の町長だったと思うが、
「見守りたい」
と。

そうだ、これが違うのだ。
地域のリーダーが見守っている場合ではないのだ。

地域のための治水と地域のためになる観光資源との対立を、
傍観者のように様子を伺って眺めているだけではいけないのだ。

観光を推し進めていくほうを優先にするために治水の工事を据え置くとか、方法を変える要望を出すとか、
逆に、住民の安全が優先だから伐採すべきと明言するとか、
地域の問題として主体的に関わっていく立場なのではないか、地域のリーダーは。

でも実際には難しい。
河川を管理する役所と、地域の自治体との関係もある。
都道府県や国なんかの上の役所には気を遣って言いたいことがあっても言いにくいだろう。

もうひとつ、仮に自治体に判断をゆだねられても、
河川の専門的な内容を首長もしくは自治体の技術職員がすぐに理解するのはちょっと大変だ。
市町村では地域の仕事しかないから、大きい事業の計画書をいきなり見せられても、すぐに理解するのは難しいだろうし、
ましてやいいかどうかの判断はもっと難しい。

なのでいきなり地域の市町村に問題をあずけても実際には意見は出てこない。
出てきたとしても、
「洪水対策は大切なので、ぜひ進めてもらいたい」
というありきたりな意見を述べて終わりだろう。

ここまで考えたけど、じゃあどうしたらいいんだろうというところで行き詰まった。
打つ手なしなのか。

しばらく考え続けた。
そして2、3カ月後、ふと思いついた。
そうだ、技術士って人達がいるではないか。
そこで技術士が登場すればいいのだ。

また長くなった。続きは後日。

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