編集作業でなく自分の頭を使って知恵を出す2008年05月05日 05時52分02秒

昨日、問題解決の4つのステップについて書きました。

 第一段階:問題発生(きっかけ)
 第二段階:目標設定(どうなればいいのか)
 第三段階:戦略・戦術立て(どうやってやろうか)
 第四段階:実施(実際にやる)

でした。
例えば偉い先生が学会誌の巻頭言に書くようなお話では、第二段階の「どうなればいいのか」というのを示してくれればいいのですが、僕ら現場技術者はそれだけでは仕事は進まなくて、次のステップ、どうやってやろうかということを考えて示していくことになります。

評論だけで終わるのではなく、自分達の提案した「どうやってやるか」の方法で人が動き、モノが動き、現場が動く。
失敗すれば自分達が提示したやり方がまずかったという批判が返ってくることだってあります。
「方向性はよかったけど、どうしてこうなっちゃったの?」
というのは、この第三段階での戦略ミスもしくは戦術のミスですね。

ここで「どうやってやろうか」を考えるとき、人によってやり方は大きく2つに分かれます。
 ・過去の例を探してそれにならう
 ・自分の経験と知識でアイデアをひねり出す
この2つです。

たぶんこの2つをうまくバランスさせて提案ごとをつくる場合が多いと思います。
つまり、事例を探して、その事例を参考にしながら自分の提案を作り上げる。

ここまではちょっと教科書的な書き方をしてきましたが、ここからは僕自身の経験を書きます。

以前に勤めていた会社を辞めて札幌に戻ってきた頃、最初はあまり仕事を受け持っていなくてヒマだったので、大学とか寒地土木研究所とか、知り合いのいるところへぶらぶら出かけていって「札幌に戻ってきました」みたいなことを言いながらお喋りして歩いていました。

そしてある時、ふと思ったのです。
この人達は自分達の頭で新しいことを考えて提案する仕事をしている。
自分はと言うと、何かを提案するとき、ほかの事例を探し、基準になる数字が書いてあるマニュアルを探し、根拠になりそうな論文を探す。
つまり、全てが人の仕事を拠り所にしていて、それを組み合わせていかにも自分達のアイデアだというように提案してきた。

編集作業なんです。
オリジナルではなく、他人の考え、他人の成果をうまくつないでバランスさせて成果にする。
頭を使って仕事しているように自分では思っていたけど、頭を使って知恵を絞り出すという過程は非常に稀で、事例・根拠を探す作業に労力を費やし、相手が納得しそうな組み合わせに頭を使う。
つまりはただの編集作業。

編集でもいい立場の仕事もあると思う。
だけど建設コンサルタントがそれではダメじゃないかということに、ようやく気づいた。
河川なり道路なり、自分達の提示した方法で世の中にモノができる。
それをあり合わせの編集作業で、根拠だけがバッチリで文句の言われにくい計画・設計ができて、それにあわせてモノができていく。

言い分はあります。
計画や設計の場面では、必ず役所から
「根拠は何?」
「どこに書いてあるの?」
「事例はある?」
と聞かれるので、根拠が不明確で事例もないようなアイデアは通りにくいし、その労力を払うくらいなら、最初から根拠明確、事例ありの方法を提案した方がいい。
役所もこちらもすんなりOKという設計のできあがり。

それが必ずしもダメだと言ってるのではありません。
自分自身、問題だなと思ったのは、そんな編集作業だけなのに頭を使っている気になっていて、実は自分の頭を振り絞って自分のアイデアをひねり出すというような頭の使い方をしなくなっていることに気づかなかったことが情けなかったということです。

今の会社に来たすぐの頃の、あのヒマだった約2カ月。
僕はこのときに劇的に変わった実感があります。

自分の頭を使う仕事のやり方。
まだまだ試行錯誤なんですが、この方向だけはぶれないで行きたいと思っています。