理系の文章苦手な人の第一歩2009年05月10日 07時56分45秒

僕が働き始めて3年目の頃、僕の下に工業高校卒の若者がついたんですよ。
彼は仕事に対してとてもまじめでひたむきでね。
単純作業から、ちょっと応用っぽい仕事まで予想以上に飲み込みが早くて、僕はとても助かってたんですよ。
彼のおかげで鬱々としていた僕まで仕事が楽しくなったくらいでね。

そんなある時、ちょっとした資料まとめのような仕事がきた。
それで、まずはいくつかの文献から必要なところを抜き出してつまみ食いして、それらしい資料にまとめようと言うことになったんです。
集める資料がそれなりに揃ったので、それを彼にポーンと「お願い!」って渡して任せたんですよ。

で、できあがりを受け取ったら、うーん・・・。
提出できるにはほど遠い。
頑張って作業してくれたんだけどね。

どこが足りなかったかというと、資料をそのまま抜き出してつないでるだけで、つじつまが合ってなかったり、同じ内容がふたつの章にまたがって出てきたり、最後は息切れしたのかですますがバラバラだったり。
修正というよりは、もう最初からやり直しって感じだったんですよね。

それで思い出したことがあってね。
僕は大学の時に同じような作業をやってるんです。
大学1年生の教養課程の頃、文系科目も単位として必要だったから、文学で源氏物語の講義だったり、政治学とか社会学とかをとっていた。
それで、だいたいはレポートが課題としてでるんだけど、あんまり熱心じゃないから教科書とか資料を丸写しして仕上げるんですよ。
あ、僕だけじゃないよ、僕のまわりのあまり熱心じゃない連中はみんなそんな感じでね。

でも本当に丸写しだけだとみんな同じになっちゃうから、適当にアレンジするんですよ。
小手先の作業だけどね。
それでも一応は最初から最後までつじつまはあうようなレポートができあがる。
先生からはお見通しだっただろうから高得点はないけどね。
でも最低、落ちることはない程度にはできるんですよ。

たぶん、今となっては、それがひとつのまとまった文章をつくる訓練になってたような気がするんです。
前回書いたけど、僕はその頃ホントに文章書くことが苦手でね。
読書感想文なんて2~3行しか書けないし、国語の試験で「ここでの作者の考えを書きなさい」と言われても、何も書けずに空欄。
それで、高校の頃なんかは10段階評価で2とか3とかばかりだったんです。

でも工業高校卒の彼と僕とを比べたときに、違いはそこだけかなって思ったんです。
文章をカタチにまとめる訓練を経ているかどうか。

自分の考えで文章を書くという段階までは行ってないんだけど、とりあえず人の文章をつなぎ合わせてでも、まとまったカタチには仕上げる。
全く文章を書けないという人が、ひとつの資料をつくるときの第一歩のような気がするんです。
必ずしも胸はって勧められる方法ではないんだけどね。
その工業高校卒の彼には、その後、仕事の中で少しずつ訓練させたような気がするな。

理系で育った人に、文章が苦手って人はたくさんいると思うんです。
そんな人も仕事で提案書だったり報告書だったり、文章を書かないといけない場面に、いずれは出くわしますね。

僕はまずは人の文章を借りてカタチにするという方法から入ってみてはどうかなって思うんですよ。
もちろん、パソコンのコピー・貼り付けで終わってしまうと何も身に付かない。
コピー・貼り付け作業して、それをもとに少しずつ文章をアレンジしていくんです。
最初は語尾の言い回しを変えるくらいから始めて、次に使われている言葉を自分が普段使っている言い方に変えていく。
そんな作業をしているうちに、もとの文章が自分なりのオリジナルっぽい文章に変わっていきますからね。

まじめに考えていくと無断盗用とかってややこしい問題になっていくから難しいんだけど、あくまで文章練習という範囲では、手本にする文章のまねごとから入るのが文章の苦手克服のひとつの方法だと思っています。
技術士試験の勉強でも、文章が苦手と思ってる人は、最初のうちはそんな感じでまとまった量の文章をつくる練習をしてみてはどうかと思います。