真保裕一、小川糸、桜庭一樹、本多孝好、乾緑郎、友井羊2017年01月03日 14時35分16秒

年末年始、何をしようかとふと思いついたのが、たまった小説誌の整理。
ばらして、もう一度読みたいものを抜き出してみた。
もう一度と言いつつ、読んだ記憶のないものも多数あり。
しかも面白い短編がたくさん混ざっていた。

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ダブル・フォールト 真保裕一
若手弁護士、金銭絡みで金融業者を刺し殺した町工場社長の弁護に抜擢される。
過剰防衛で罪を軽くする見通しが立つが、ずっと頭に何か引っかかり続ける。
誰のために仕事をするのか、その仕事が誰のためになるのか、正義感が自分の浅
はかさの故なのか、自分の仕事を考えさせられる場面が随所にあり。
読み応えあり◎、読後感も◎。すばらしい。


にじいろガーデン 小川糸
6歳のひとり息子を育てる離婚しかけの主婦、駅で自殺しようとしていた女子高
生に一目惚れ。
息子を連れて駆け落ちし、女二人、男の子ひとりで田舎生活を始める。
レズ理解できず△、読後感は微妙○。


ロボトミー 桜庭一樹
元ボーカルのかわいい彼女と結婚したが彼女の母親が全く子離れせず、結婚式で
泣き続け、毎日娘に電話をかけてきて娘に構い続ける。
ある出来事のあといい加減にしろと殴りつけたら彼女は起き上がらなくなった。
何とも言えず悲しくやりきれない。
感動とはまた違うけど◎、読後感○。


ビザール 桜庭一樹
25歳女性、ツイッターに出来事を書いて他愛もないやりとりをする日常。
転職した会社で朝、隣の部署のおじさん社員と親しくなり、ツイッターのことも
話してしまう。
少し刺激が足りない感じも○、読後感は△。


言えない言葉 本多孝好
小4の少年、友達から「死神狩り」に行くぞと言われたが、標的は中学生の女子。
後をつけるも見つかり自分だけ捕まり、なぜ尾行したか、なぜ石を投げたか問い
詰められるが、石のことは知らない。
子供の頃、いろんな企みをしたことを思い出す感じで○、読後感も○。


溜池のトゥイ・マリラ 乾緑郎
夏休み、息子と団地の近所の神社のお祭りに行くが、最近、テキ屋が締め出され
てきちんとなったお祭りに、昔の縁日のような雰囲気がなくなった寂しさを感じ
る。
奥の池ではヘラブナ釣りの愛好者が自分ら以外の釣りを禁止する立て札を勝手に
立てて子どもたちを締め出す。
時代が変わり、社会がきちんとすることでなくなることがいろいろある。
いまの時代、昔の時代のお祭りが想像できて○、読後感も○。


一人ぼっちの王国 乾緑郎
女子高生、小説を書いて締め切りギリギリに投稿しようと郵便局に駆け込むも、
窓口のおじさんが余計なやりとりを始めてイライラして送れず。
大学生の兄が引っ越しバイトで近くの団地に行くと、大量の書きかけ小説を処分
する部屋だったと言う。
切なくなる感じが○、読後感も○。


団地の孤児 乾緑郎
認知症を患った母親の介護のため勤め先を辞めて弁当屋でバイトし始めた男性、
団地の自治会副会長を断りきれずに引き受ける。
自治会の会合で、団地の片隅の古ワゴン車に数年も住み着いている男が不審で何
とかしないとと話題になり、訪ねる役がまわされる。
きちんと思い出せない自分の過去の記憶が少しずつ明らかになっていく。
時代を想像できて、感傷的にもなり○、読後感も○。


シュークリームが膨らまない 友井羊
吃音症でいつも言葉に詰まり同級生との会話が苦手な女子高生カナ、料理が得意
な同級生男子から誘われて調理実習室でのお菓子づくりの講習に誘われる。
教え通りにつくったはずのシュークリームの生地がオーブンのなかで膨らまない。
くやしくて自宅で再びやってみるときちんと膨らむ。
そこである可能性に気がつき仕返しを思いつく。
理を持ってきちんと仕返しするところが痛快で○、読後感も○。

”チョコレート”が出てこない 友井羊
調理実習室からチョコがなくなった。
前日の鍵当番だったカナが犯人として疑われる。
チョコの性質からあることを思いつく。
チョコの知識がちょこっとつくとこで○、読後感も○。

カトル・カールが見つからない 友井羊
人探しを頼まれる。
おばあさんが街で女子高生に親切にされたが、名前を聞いたら駆け去ったという。
手がかりはアップルパイ。
種明かしが、それは想像できないなと思いつつ○、読後感も○。

クッキーが開けられない 友井羊
保健室登校する女子高生のところに宅配でクッキーが届く。
でも差出人を見ただけでカナにあげると渡す。
クッキーにまつわる出来事がこの女子高生の保健室登校のきっかけだったことが
わかる。
根がやさしい女の子に気持ちが和らぎ○、読後感も○。

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